ウプサラ大学NICU見学 Q&A
見学準備中にみなさんから 「これを見てきて」 「聞いてきて」 の声を頂きました。どうもありがとうございます。
ファミリーセンタードケアっていいなあ・・・でも、あんな事こんな事どうやって解決しているんだろう、と 気になりますよね。
見学では、ていねいな工夫と、その背景にある考え方を体いっぱい吸い込んできました。
ぜひごらん頂き、ご一緒に日本にあったケアを考えられたらと思います。 ご意見・ご感想お待ちしています。
申し訳ありませんが、各項目へのページ内リンクはできません。
ところどころの写真と一緒にお楽しみ頂ければ幸いです。
1. 感染の予防をどのようにしていますか
2. 現在のファミリーセンタードケアに至るまでの大変さ、工夫、広め方を知りたいです
3. 母乳の取り扱いはどのようにしていますか
4. 直接授乳の支援はどのようにしていますか
5. カンガルーケア(NICUで)を始める基準は、どうなっていますか
6. 安全の確保はどう行っていますか
7. 個室や半個室を使っていて、赤ちゃんの状態の変化にすぐ気付けるでしょうか
8. きょうだいの預かりはどのようにしていますか
9. スタッフの配置はどのようになっていますか
10. 医師、看護師以外の職種の配置はありますか
11. スタッフへの教育をどのようにしていますか
12. 家族がケアに参加していく流れを知りたいです
13. このようなやり方を、家族が負担に思うことはないのでしょうか
14. ケアに積極的でない家族とは、どのように関わっていますか
15. これまでファミリーセンタードケアができなかった家族、とても難しかった家族はありましたか
16. 家族と、診療やケアについてどのように情報を共有していますか
17. ファミリーセンタードケアをすると、スタッフの仕事量が増えるのではありませんか
18. 医療処置(とくに侵襲的なもの)に、家族が立ち会いますか
19. 産後すぐにNICUで付き添うとき、お母さんのケアは誰が、どのようにしていますか
20. ターミナルケア(残された時間が少ない赤ちゃんとその家族へのケア)・
グリーフケア(赤ちゃんを亡くす、亡くした家族へのケア)は、どのようなものでしたか
21. 印象に残った、大事だなと思った、スタッフと家族の関わり・スタンスは何ですか
1.感染の予防をどのようにしていますか
まず、NICUの入室時、退出時は流水で手洗いをします。それ以外スタッフは流水手洗いを頻回にする姿は見かけませんでしたが、とにかくケア前、ケア後にアルコール擦り込み消毒を徹底していました。家族も習慣のようにアルコール擦り込み消毒をしているのが印象的でした。スタッフはプラスチック手袋は使用していませんが、ケア時はエプロンを装着していました。
また収納スペースを多く設計し、できるだけ外に物品を置かないように、掃除もしやすいように工夫されていました。
感染対策は特に看護師がしっかりしており、おえらいさんが長袖スーツで視察に来たときも、静かに外を指さして、その格好ではだめです、というアピールをされたそうです。袖は肘までまくって手洗い、アルコール擦り込み消毒ができるように徹底されています。ウーベ先生でも時に看護師に怒られるとお話されていました。お互いに注意しあって、赤ちゃんを守っているんですね。
家族にはNICU内での感染予防について、しっかりとしたレクチャーをしているそうです。これにより、症状がある時は入室しない、不必要なところを触らないなど、家族の意識はスタッフよりも高いくらいだそうです。
きょうだい面会についてですが、以下の条件を満たすことを確認して行っています。
小学生以上のきょうだい: 感染症の症状がないこと
小学生未満のきょうだい:
その年齢で推奨される予防接種がすべて終了している
NICU入室前には5日間自宅待機
これらの確認も、スタッフ以上に家族がアンテナをはっているそうです。
感染を防ぎながら、赤ちゃんが大切な人と時間を過ごせるようにする。家族と一緒にやっていくことで、むしろうまくいっているように感じました。
2.現在のファミリーセンタードケアに至るまでの大変さ、工夫、広め方を知りたいです
新しいケアを提案した時、快く思わない人もいたし、時には「クレイジーだ」と言われることもあったと振り返っておられました。まずは数人の仲間と、家族とできる小さなことを始めたのだそうです。そうすると「どちらでもいい」と思っている人たちは協力してくれました。赤ちゃんや家族の様子がこれまでのやり方よりずっと良いことに気付き、新しいやり方を真似する人も現れました。徐々に理解が広がり、味方になる人が増えたそうです。
医師や看護師へのトレーニングも新しくする必要がありました。その方法については11番で述べています。
24時間カンガルーケアは、はじめは予定日近くで生まれた赤ちゃん(低血糖や黄疸などの治療のために入院)で始め、その後在胎35週くらいまでの赤ちゃん⇒30週⇒28週⇒25週⇒最近では22-23週の赤ちゃんもできる状態になれば開始、と徐々に範囲を広げました。
家族と一緒に行うことのできるケアは何かということについて家族・スタッフに調査をし、その情報をお互いに共有したそうです。安全に行うための工夫や準備にはとても注意をはらっています。
ファミリーセンタードケア以外の分野でも努力をしたとのお話でした。論文報告や治療成績改善で評判が上がることなどによって、経営側に予算を増やすよう説得もできたそうです。そのようにして獲得した予算を、こどもと家族が一緒にいるために活用しているのです。
家族がインターネットなどを通じて、ウプサラでのケアが良かったと経験を広めてくれることもあり、これは経営側に対しても、世の中の人の理解を得るのにも強力とのことでした。
看護師長のインマリさんと。
奥に少し映っておられるのは、半日お世話になった通訳の矢作Lundbergさんです。スウェーデン在住の方から生活や医療の事情をお聞きでき、こちらも貴重な時間となりました。
3.母乳の取り扱いはどのようにしていますか
超低出生体重児の赤ちゃんでも、生後1時間から経腸栄養(おなかを使って栄養をとる方法)を開始するそうです。在胎35週未満の赤ちゃんでは人工乳は医学的理由がない限り使用しません。スウェーデンには母乳バンクがあり、母乳がなければバンクを使用します。母乳の強化(専用のパウダーを母乳に混ぜ、蛋白質やミネラルを増やすこと)は排便を認めたら日齢2から開始します。
ウプサラ大学NICUでは、早産の赤ちゃんを診療する際、しっかりとした栄養をあげること(特に生後早期)が非常に重要と考えています。お母さんのお腹の中にいる場合の成長に少しでも近づけられるよう、点滴での栄養と経腸栄養を合わせて蛋白質の摂取が1日4-5g/kgを目標にしているそうです(日本で一般的に行われるより多い量です)。これによる赤ちゃんの体調不良は経験していないとのことでした。
母乳の成分分析を週に1回行っており、その母乳に合わせた強化を行っているとのことです。
母乳の培養は行っていません。
4.直接授乳の支援はどのようにしていますか
早産の赤ちゃんが直接おっぱいをマスターするのに、長時間のカンガルーケアが役立っています。
ウプサラ大学NICUでは、ある日突然直接おっぱいを始める(例えば、△週になったので今日から・・・)、ということはしていません。そのずっとずっと前からカンガルーケアをたくさん行い、赤ちゃんとお母さんはお互いのことがよく分かり、おっぱいの所での抱っこにも慣れています。スタッフはカンガルーケア中の赤ちゃんと家族の様子を、PIBBS(preterm infant breastfeeding behavior scale、早産児の哺乳行動スケール)と照らし合わせています。おっぱいの方に近づく、においをかぐ、なめる、口を開ける・・・、こういった哺乳のための大事な行動がそろってくると、いよいよ本格的におっぱい、としている様です。
カンガルーケアは既に「おっぱい」なんですね。またカレンダーではなく、赤ちゃん一人ひとりの成長の流れの中でケアが判断されているところも勉強になりました。
授乳は約2時間おきにされていて、直接授乳を行い、足りない分を胃チューブから補っていました。
見学初日の朝ごはん。どきどきしつつも、しっかり食べました
お父さん、牛と戦う・・・
5.カンガルーケアを(NICUで)始める基準は、どうなっていますか
24時間カンガルーケアは、最初は予定日近くで生まれた赤ちゃんで始めたそうです。その後、方法や安全確認をしながら、在胎35週の赤ちゃん⇒30週⇒28週⇒25週⇒最近では22-23週の赤ちゃんもできる状態になれば開始、と徐々に範囲を広げました。
カンガルーケアができる状態とは ①皮膚の状態が良い ②保育器の外で体温や体の水分が保てる ③家族が心づもりできている がそろった状態です。 在胎22-23週の赤ちゃんでも経過がよければ生後数日からカンガルーケアを始められるそうです。そんな赤ちゃんでは2時間くらいのカンガルーケアからスタートし、徐々に時間を延ばしていきます。カンガルーケア以外の時間も、家族は保育器の隣のベッドで赤ちゃんに付き添います。
カンガルーケア前後の移動が多いと赤ちゃんの負担が増えるため、カンガルーケアは細切れにならないよう最低2時間は続けて行うとおっしゃっていました。
ウプサラ大聖堂の中
6.安全の確保はどう行っていますか
他の項でも記述していますが、「安全であること」はウプサラ大学NICUのケアの大前提となっています。ただ、このNICUの大きな特色は、そこに「赤ちゃんにとって良いか」、「家族にとって良いか」を加えた三つの視点で診療やケアを考えていることです。赤ちゃんと家族が一緒にいること、家族がケアの中心となることは、とかくサービスやオプションと考えられがちで、安全かどうか分からないなら後回しになることも多い医療現場です。ウプサラ大学NICUでは、「家族と一緒に安全にやっていくにはどうしたらよいか」という考え方で、一つずつのケアに様々な工夫があったり、ステップを設けて家族とやっていくことができるようになっています。
家族がケアの中心となりながら、安全にケアをすすめていく様子は12番で述べています。
人工呼吸管理中の赤ちゃんのカンガルーケアは、チューブが引っ張られていないか、回路に水が溜まっていないか家族が手鏡を使って確認していました。スタッフは赤ちゃんと家族が全体としてうまくいっていることを見守り、責任を担っています。
偶然、見学中に計画外抜管がありました。一組の双子のうち、カンガルーケアをされていない方の赤ちゃんでした。カンガルーケアされていない方の赤ちゃんだった、という点は私たちにいろんなことを問いかけてくるように思います。
7.個室や半個室を使っていて、赤ちゃんの状態の変化にすぐ気付けるでしょうか
看護師が一人で数人の赤ちゃんをみるより、家族がそばにいる方が赤ちゃんの変化に気づきやすいという考えです。
家族は自然に保育器やモニターの役割も果たすことができる、とウプサラ大学NICUのスタッフは確信しています。実際に長い期間赤ちゃんと一緒にいる家族は、誰よりも自分たちが赤ちゃんのことをよくわかっているという自信に満ちていました。もちろん医学的な責任はスタッフが担いますが・・・。
また赤ちゃんのモニターの値は、離れていてもモニタールームでまとめて確認ができるようにもなっていました。
8.きょうだいの預かりはどのようにしていますか
赤ちゃんに長時間付き添う間のきょうだい預かりは、そう簡単ではないですね、と話されていました。親戚やお友達にみてもらったりしているそうです。病院近くの家族用施設に一時住んで、そこと病院を往復したりもするそうです。きょうだいがNICUに少しでも長くいられるような遊びスペースはいいなあと思いました。
きょうだい預かりを考えるときは、きょうだいが赤ちゃんと会えることも同時に考えられたら、と感じました。きょうだいが赤ちゃんに出会え、どんな様子なのか直接感じられることは、預かりが大変な状況でも、お兄さんお姉さんでいるきょうだいの力になるのではないでしょうか。
9.スタッフの配置はどのようになっていますか
NICUには10~12のベッド(赤ちゃんを入院させることができる定数)があり、看護師の配置は3人の赤ちゃんに対し、1人の看護師+2人のアシスタントナースです。この配置は日本とは違って、昼夜を問わず一定です。
看護師は隣にあるモニタールームで、赤ちゃんの心拍数や酸素のつき具合を見守ります。実際に赤ちゃんと家族の最も近くにいるのは2人のアシスタントナースです。看護師とアシスタントナースは教育期間が違い、看護師は3年、アシスタントナースは1年間の教育の後に資格をとることができます。責務や権限には違いがありますが、お互い協力し合いながらケアを提供しています。
看護師はアシスタントナースを含め総勢120人。とても多く見えますが、パートタイムや育児休暇中の看護師もおり、勤務の調整も大変そうでした。また、看護師が環境整備や掃除、機器類の点検整備なども行うため、「赤ちゃんや家族のためにと考えると、まだまだ人数が足りないのよ」と看護師長は話していました。
医師は研修医(小児科専門)を含め10人です。
NICU施設長の医師と看護師長の権限はとても広いです。行政や病院管理者と交渉し、NICU運営の予算を獲得します。総額が決まった後、予算の使い道は彼らに任されており、医療機器の購入に使っても、スタッフ増員に使っても自由なのだそうです。スタッフ採用時の面接も病院管理者ではなく自分たちで行います。人柄やコミュニケーション能力を重視しているとおっしゃっていました。看護実習に来た学生の様子を見て、その場で声をかけることもあるそうです。現場をよく知る人物に権限があることはとても驚きで、効率がいいなと思いました。
10.医師、看護師以外の職種の配置はありますか
医師・看護師以外には事務員が配置されています。臨床心理士は他部署と兼任のようでした。保育士の配置はありません。
11.スタッフへの教育をどのようにしていますか
130人ものスタッフにまんべんなく教育をすることは難しいように思えます。ウプサラ大学NICUでは、スタッフ同士がコミュニケーションを深めながら、教育ができるよう工夫しているようです。
大きなものとしては年に2回合宿を行うそうです。医師も看護師も講義を受けたり、ケアのポリシーを確認しあったり、飲食を共にします(お酒タイムもあり)。
また、看護師は普段からグループに分かれ、栄養・感染・コミュニケーションなどのテーマを分担し、勉強会を通じてスタッフ教育を行っています。私たちが訪問した際も、隣の部屋で勉強会を行っていました。このやり方は日本でもよく行われていますね。
毎日の勤務開始時に、新しく導入した機器類の取り扱いなど、全員が知っておくべき事柄についてミニレクチャーを行うこともあるそうです。
教育とは直接関係ありませんが、スタッフが廊下ですれ違う際など気軽に声をかけ合う様子がみられました。「お互いを誇りに思いますよ!」とウーベ先生と看護師長さんが言い合っていました。コミュニケーションを深めること、言葉に表すことは、チーム医療を行う中で大切な部分かもしれません。
12.家族がケアに参加していく流れを知りたいです
初めは、赤ちゃんをなだめる、おむつ替え、着替え、移動や体位を替える、授乳などから始めます。その後モニタ―の張りかえ、誤作動したアラームを消す、など少しずつステップアップ。
一日目は一緒にやって、次の日は同じことをすこし離れて声かけのみでやってもらう・・・ 一つずつのケアには手順毎のチェック表が作られていて、一緒にできた、声かけでできた、家族だけでできた、の3段階を確認するようにしているそうです。手順を通して家族が落ち着いてできる様子なら、家族はそのケアを任され自分達で行います。医学的な責任はスタッフが担います。遠くからとか、すこし後になってから、赤ちゃんと家族がうまくいっていることを確認しているそうで、絶妙な距離感を感じました。
13.このようなやり方を、家族が負担に思うことはないのでしょうか
私たちが出会った家族は、24時間の付き添いを、「タフワークだけれど、エンジョイしている」とおっしゃっていました。 スウェーデンではお父さんも、お産前後の休みや育児休暇をしっかりととれるため(その背景については こちら)、両親で協力して、病院の中で育児を行っていました。
カンガルーケア中に家族が眠ったら、そのまま看護師がケアを行うそうです。
蘇生や採血・点滴などへの家族の立ち会い、そのサポートについては18番をご覧ください。
赤ちゃんといることは楽なことばかりではありません。でも、赤ちゃんの様子や治療の中身がいつも分かっている、自分達のペースにあわせ役割がいつもある、自分が赤ちゃんのために力になれている、そんな感覚が家族を支え、家族が力を発揮することにつながっているように思いました。
14.ケアに積極的でない家族とは、どのように関わっていますか
24時間カンガルーケアが赤ちゃんにとって必要なことだという説明を行います。できないという家族に無理強いはせず、なるべくそばにいてくれるように話し、相談しながら徐々にその時間を延ばしたり、家族が受け持つ役割を増やしていきます。
たいていの家族は、赤ちゃんにとって必要と聞いて、徐々に「当たり前のこと」として受け入れられるそうです。
15.これまでファミリーセンタードケアができなかった家族、とても難しかった家族はありましたか
黄疸の光線療法はもちろん、仮死の赤ちゃんの低体温療法のときも、お母さんの胸の上にマットを敷いてカンガルーケアを行うとおっしゃっていました。カンガルーケアができないのは腹壁破裂の赤ちゃんや横隔膜ヘルニアの赤ちゃんくらいだったそうです。そんな時もそばに付き添ってもらい、家族が受け持つ役割はたくさんあります。
ハンディキャップをもつような赤ちゃんではカンガルーケアの意義がより大きいので、動脈ラインなどがあっても体位の工夫などで安全な方法を考え、積極的に行っているようです。
16.家族と、診療やケアについてどのように情報を共有していますか
毎日の回診は、カンガルーケアや付き添いをしたまま行われ、家族も治療チームの大切な一員としてその場に立ち会います。週に1回は主治医と家族が面談室で、現在の病状、治療方針についてしっかり話し合いができる時間が設けられていて、家族の不安が解消するように努められていました。
ケアのポリシーや方法については入院時に説明するようですが、現在は説明のためのDVDも作成中とお聞きしました。
ウプサラ大学NICUを退院した赤ちゃんのお父さんお母さんが、交流会を開催してくれて、現役お父さんお母さんや出産予定の方と話す機会があります。そこで、ケアについても情報を共有したりするそうです。フェイスブックで感想などを広める家族もあるそうです。
17.ファミリーセンタードケアをすると、スタッフの仕事量が増えるのではありませんか
ベテラン看護師に、今のスタイルで家族へのサポートが大変ではないかと聞いたところ、「もちろん大変よ!」という答えが返ってきました。「でも、以前よりもずっといい方法だと思う」そうです。
私たちが見学した集中治療室では、栄養の注入や、赤ちゃんの移動、姿勢を整えるなどのケアを家族がやっていて、スタッフは離れたところから見守っている様子でした。
家族が赤ちゃんをなだめたり(カンガルーケアをしているので、そもそも赤ちゃんがあまり泣かない)、誤作動したアラームを切る役割を担うので、スタッフはより専門的な仕事に力を注ぐことができる、とおっしゃっていました。実際、日本の看護師さんは赤ちゃんのなだめに奔走していますね。
また、日本で行われているような「退院指導」を改めて行う必要は少ないように見えました。家族は赤ちゃんと一緒にいることに既に慣れていますし、その流れで、自立してこどものお世話ができるようになっている様子でした。
日本よりも看護師がたくさん配置されてはいましたが、「仕事が増える」かどうかは考え方・やり方次第なのかもしれません。
夜7時をまわってもとても明るい夏のウプサラ市内。
スウェーデン料理の、
ミートボールと
リンゴンベリーソース
メンバーでの打ち合わせのおとも。
どうも食べ物の写真が多いです・・・
ノルウェー観光の写真も
ご紹介します
18.医療処置(とくに侵襲的なもの)に、家族が立ち会いますか
まず、赤ちゃんが生まれた直後の蘇生(呼吸の管や、たくさんの点滴を入れる)に、希望する家族(お父さんやきょうだい)が立ち会うことに私たちもはっとしました。このやり方はスタッフも、家族も決して楽ではありません。でも、「こどもが今どうなっているのか、何を行われているのか分からないことはもっと辛い。そばにいてやりたいと思う家族は少なくない」。そんな思いから工夫をしながら、家族が立会いを選択できる環境を作ってこられたとのことでした。蘇生に立ち会う家族には、アシスタントナースがそばに寄り添い、今どんな状況なのか伝えているそうです。
NICU入院中の採血や点滴は、家族の胸に赤ちゃんがいる状態で行われることが多いようです。ただ、その状態で行うか、保育器で行うかは処置を担当する人が選択できます。
痛みを伴う処置をする際、赤ちゃんは家族の胸にいる方が痛みを少なく感じ、穏やかでいることが多いそうです。また家族が優しくおさえたり、赤ちゃんを落ち着かせる役割を行ってくれるので失敗が少なく、また人手も少なくすむとのことでした。先輩たちがそれで成功しているのを見ているうちに、徐々に家族の胸で処置を行うことを選択する医師・看護師が増えてきたそうです。現在では、なんと気管内挿管(気管に呼吸のための管を入れる)も(!)家族の胸の上で行う方が簡単だと分かってきた、とおっしゃっていました。
診療・ケアのあらゆる場面で、家族が役割を担えるように、こどもの力になれるようにされているなあと感じました。
19.産後すぐにNICUで付き添うとき、お母さんのケアは誰が、どのようにしていますか
お母さんの体調がすぐれないときには、お父さんか他の家族・親戚・頼まれた近しい人が赤ちゃんに付き添います。
お母さんは体調がよければ産後24時間以内に退院します(スウェーデンの産後入院は短い)。入院を続ける必要があるお母さんへのケアは、産科のスタッフがNICUへ出向いて行うとのことでした。
20.ターミナルケア(残された時間が少ない赤ちゃんとその家族へのケア)・グリーフケア(赤ちゃんを亡くす、亡くした家族へのケア)は、どのようなものでしたか
赤ちゃんと家族が一緒にいるという、とても大切なことが、お別れに関係なくずっとずっと前から、どんな赤ちゃんでも行われています。赤ちゃんはきょうだいや、おじいちゃんおばあちゃんにも普段から会っています。特別なケアについては聞いていません。
NICUと同じ階だけれど少し離れたところにはサイレントルームという部屋があります。照明や音楽などの環境が調整できるようになっていました。ここで、今までがんばってきた赤ちゃんと家族が、静かに一緒の時間をすごすのだそうです。牧師さんを呼びお祈りの時間を持つこともできます。
家族を支えるために、臨床心理士やカウンセラー、精神科医と協力することもあるとおっしゃっていました。
21.印象に残った、大事だなと思った、
スタッフと家族の関わり・スタンスは
何ですか
赤ちゃんの健診のときに、「おなかが少し膨らんでいるようなのですが大丈夫ですか」
などの家族からの質問に対して、スタッフが、「うんちは出ていますか?お乳の飲みはどうでしょう。」と、どこを見れば大丈夫と分かるのかを説明していたところが、「なるほど、だから大丈夫なんだな」と思えていいなーと感じました。(高田)
カンガルーケアをしながら健診にやってきた
お父さんに、健診後カンガルーケアの体勢がとれるようお手伝いを申し出ました。
でも、お父さんは「大丈夫」と一言。そして
赤ちゃんはあっという間にお父さんの胸に。「ほらね」という様子で微笑むお父さんの姿がとても印象的でした。赤ちゃんが生まれて1日目のことでした。
(山田)
ウーベ先生は何度も、「それは安全か」そして、「赤ちゃんにとってよいことか」「家族にとって良いことか」をいつも考えていると教えてくださいました。
安全面、特に感染についてはとても慎重に考えているとのことでした。
赤ちゃんの命の安全は最優先にしながら、家族にとって満足できるファミリーセンタードケアを同時にすすめていく、とても難しいことですがウプサラでは実現できている、そのことが大きな励みになりました。(斎藤朋)
集中治療室で赤ちゃんに呼吸の変化がみられたとき、お母さんとスタッフが何やら話し合った上で、呼吸器の酸素濃度を上げていました。(医師からの指示簿に、看護師さんが調整してよい呼吸器設定の範囲が書いてあるそうです)お母さんが赤ちゃんの治療やケアに自然に参加している様子が感じられ、そうしたことが積み重ねられていくことの大切さを感じました。(野口)
「家族と一緒に安全にやっていくにはどうしたらよいか」という視点がとても勉強になりました。こどもとずっと一緒にいる家族は自信や自負があり、しかもリラックスしている様子でした。こどもの病状の変化や治療も見ているのでスタッフのことも、より信頼できるのだろうと思います。
スタッフは自然に家族が主導できるよう、うまく役割を任せたり、ほどよい距離感を保っているように見えました。「うまくやってこられましたね」というような声かけもしていました。(中川)
フィヨルド(ノルウェー)と
こわいもの知らずさん(日本)
静かなフィヨルド
(ノルウェー)