青森県立中央病院NICU その3

【お母さんのところに、おっぱいしに行くよ (直母外出)】
青森県中NICUの特徴的なケア 「直母外出」 について教えて頂きました。
簡単に言うと、NICU入院中の赤ちゃんが、産科に入院中のお母さんの元へおっぱいをしにお出かけすることですね。
※補足: 日本の病院では、NICU入院中の赤ちゃんがNICU以外の場所に出て、
時間を過ごすことは多くありません。
赤ちゃんのケアをするのはNICUの看護師さん?、行った先の看護師さん?
など看護上のルールに関わることもあるからです。でも、親子は大事な一組・・・。
赤ちゃんとお母さん、赤ちゃんと家族 をひとまとまりに包み込む医療を、
みんなで考えていけたらいいですね。
青森県中で「直母外出」が始まった経緯ですが、帝王切開が全身麻酔の方針でありお母さんの体調回復に
時間がかかること、NICU内で直接授乳のサポートが充分にできないという背景があったのだそうです。
直母外出ができるのは、こんな赤ちゃんだそうです
-
おもに34-35週生まれ
-
呼吸、循環、体温が安定している
-
点滴が終了し血糖が安定している
冬はとても寒い青森! 赤ちゃんの移動には工夫がこらされていました。
-
移動用コットに保温のためのゲルマットを敷く
-
赤ちゃんは帽子をかぶって、おくるみ、掛け物でしっかりくるまれます
SpO2モニターを使っておられました
そしてお母さんのお部屋に赤ちゃん登場!
お母さんはベッドに横になった状態でおっぱいをはじめます。ゆったりと・・・
ここでのサポートは産科の助産師さんが行います。
こんなやり方で30-60分過ごし、帰りは助産師さんがNICUヘ赤ちゃんを送り届けます。
少し早く生まれた赤ちゃんは眠りがちなことも多く、最初は量にならないこともよくあります。
お母さんは赤ちゃんに授乳した後、そのまま高性能電動搾乳器で搾乳をします(なんと院内に15台あるそうです。
すごいですね)。
赤ちゃんが必要な分飲めていなかった場合はNICUで残りを注入します。
お母さんの近くでシリンジを使い追加授乳することもあります。
網塚先生が直母外出の様子を動画にして下さっていました。最初はなかなかうまく吸いつけない赤ちゃんでしたが、
お母さんとスタッフに応援されながらがんばっています。
赤ちゃんにもお母さんにも、本当に大切な時間ですよね。
見学メンバーみんながおもわず、応援しながら見てしまいました。
この一連の流れを、夜間帯にも同様に約3時間毎に行う(お母さんの体調にあわせ)とのことで、大変驚きました。
【産科スタッフと一緒に】
産科病棟の夜勤看護師は29のベッドに対し5人だそうです。そんな中、夜間もNICUからの直母外出への対応を
がんばっておられるんですね。
網塚先生は「産科との連携には簡単でない面もあるが、助産師さんの母乳育児支援に対する熱意やプライドを
理解して、うまくやっている」と話しておられました。
今後はNICUにも助産師さんを配属し
(※こどもかぞくまんなかメンバーより: 母乳育児支援をお勉強したNICU看護師さんも、すてきですね・・・)
赤ちゃんがおっぱいに出かけるかお母さんに来てもらうか選べるようにしたいと言われていました。
お母さんの母乳分泌がなかなか増えない場合、一時的には必要な量だけ人工乳を追加することもあります。
そうしながらも、「直母外出」を経て母児同時退院する親子の86%が、退院時に完全母乳育児となっています。
青森県中では、早産であっても産後早期から直接授乳の機会がたくさんあります。
「お母さんが産後の多幸感を感じている間に、自然と赤ちゃんと力をあわせることで、早期退院や母乳育児につながる」と、網塚先生はおっしゃっていました。

移動用コットと保温ゲルマットです
NICUと産科病棟の間の渡り廊下
